日時   :2004年9月24-25日
山域   :南アルプス
山名   :北岳
ルート名 :バットレス4尾根主稜
形態   :アルパイン
目的   :アルパインクライマーへの第一歩を果たす
メンバー :北村、久池井
報告者  :久池井

学生時代、初めてテントを担いで登った山、3000mを超す山を登ったのだがそれが北岳である。当時、バットレスを登るクライマーを一般登山道から見て、「かっこいい」と思ったのを覚えている(こっちは、汗だくになりながらやっとの思いで山頂に向かって登っているのに・・・)。それから、「俺もいつかはバットレス!」との思いを抱きつつも、社会人になりバタバタして時は流れ、やっと落ち着いて渓嶺に入会していろいろと山行を重ねて、いよいよ念願のバットレスに挑戦するチャンスが到来した!気が付くと初めての北岳から7年、渓嶺に入会して2年が経っていた。パートナーは北村さん。これまでの山行からIII級くらいはリードできる自信もついたので、計画段階から「ぜひ、スタカットで登りたい」と意見を言って、快くOKをもらう。そうは言っても、あくまでゲレンデまたはそれに準ずるところでしかマルチピッチをしたことがない。しかも、ほとんどセカンドだったので本当の意味で「本ちゃんデビュー」。緊張するぜ!
23日 夜9時に宇都宮を出発。実は、昼間は相沢さん相手に古賀志で岩トレ。マルチのシステムの確認をする。
24日 午前2時に林道ゲート前駐車場に着く。車中で仮眠をとり、6時に起床。広河原に移動して、7時に登山開始。食料をたくさん詰め込みすぎたせいか、急坂がきつくなったところで北村さんのスピードについていけず、途中で荷物の一部を北村さんに持ってもらう。9時に小屋に到着。テントを設営して、軽く食事をして休憩する。10時半になったところで、明日のための下見にでかける。この頃にはすでにガスっており視界は悪い。バットレス沢に明瞭な踏跡があり、それをたどって下部岩壁へ。何分、視界が悪いので本当に取付きなのか不安になるが、岩に「Bガリー」と書かれたペンキを見て一安心。雨も降りそうなのでテント場に戻る。もし、天気が良ければ1ピッチくらい登りたかったなぁ。夕方には雨も本格的になり、二人とも気分が沈む。北村さんは、先週の甲斐駒のトラウマがあるせいか、明日の天気がすごく心配のようだ。俺もやはり、デビューは気持ちの良い日にやりたいので、ちょっと消極的になる。25日 予定通り3時に起床。空を見上げると星空が。これは、前月のマッターホルンと同じじゃないか!二人とも行けると確信したので、すぐに朝食の支度にかかり、いろいろと準備をすませて出発。昨日は見えなかった鳳凰三山も見え、遠く太陽が顔を出そうとしているところで取付きに到着。6時20分、1ピッチ目のクラック(III級)は北村さんリードで登攀開始。2ピッチ目(III級)は俺がリード。ここも難なくクリア。記念すべき「本ちゃん」リードということで、北村さんと握手。ここでロープをしまって、4尾根の取付きに行くのだが、ガリーを直上してしまい、後続パーティーの動きをみて、間違ったことに気づく。懸垂でもとの場所に降りてみると、ちゃんと目印が木についてあり、しっかりとした踏み跡を発見。気持ちが先行したのかな?まっ、これもご愛敬。cガリーを過ぎるとここでも「4オネ」とペンキで書かれた岩を発見。これに従って、濡れているスラブ(IV級)を北村さんがリードして、やっと4尾根取付きの大テラスに到着。ここで、小休止。昨日と違って視界も最高。晴れ間も出てきて紅葉がきれい。気を取り直して、9時に再スタート。第四尾根の1ピッチはV級のクラック。北村さんは問題なくクリアするが、俺はちょっと厳しかった。ここを過ぎるとあとは問題なし。2ピッチ(III級)は俺の番。さすがに、体もあたたまり気分も落ち着き楽に登れた。3ピッチ(III級)は、40mなのだけれど、北村さんがロープいっぱいに登る。おかげで4ピッチ(III級)は、20mのはずなのだけれど、登り始めてすぐにとんでもない垂壁が!どうみても手も足もでない。すぐ下にいる北村さんに確認してもらうと、三角形の垂壁でこの第四尾根の核心部であることが判明。さきほどのピッチで北村さんが、かなりの距離を稼いだことが判明した。と、いうことでこのピッチはわずか10mも登らないうちに終了。5ピッチ(V級)は、支点が豊富にあるのが見えるのだが、なかなか最初の一手が出せない。つい、ヌンチャクを回収するつもりが掴んでしまう・・・。マッチ箱で有名な終了点に着き、ここで、さきほど抜かれた後続パーティーに追いつく。時計をみると10時半。ナイスリカバリー!ここから10mほど懸垂して、北村さんがテラスまで降りることなく、6ピッチ(IV級)をそのままリード。しばし、景色を楽しんで小休止。7ピッチ(III+級)は、終了点である枯れ木テラスがビレイポイントから見えるので、それに向かってひたすら登る。終了点の右側には中央稜へ向かう懸垂用支点があった。8ピッチ(III+級)は、小垂壁を超えスラブを登る。9ピッチ(II級)は、しっかりとしたスラブを登ると、テントが張れるほどの大テラスに着く。ここで終了。登攀具をしまい、踏み跡を辿って30分ほどして日本第二位の北岳山頂に立ち、北村さんとがっちりと握手を交わす。これなら、このまま雨も降られずに下山できることも確信したので早々と降りる。13時に肩の小屋についてコーラで小休止して、14時20分には小屋にてテントを撤収。昨日、登った急坂では何度か足を滑らせたものの、広河原の駐車場に4時40分に到着。なんと、ラッキーなことにゲートが5時まで開いていることがわかったので、すぐに出発。温泉、食事をして無事に宇都宮に23時30分着。