目的は不純だけど…あとの楽しみのために

重荷を背負って東南稜!


期日:2005年4月2日(土)〜3日(日)
山域・山名・ルート:那須朝日岳東南稜・三本槍
形態:バリエーション、縦走
目的:旭東稜の代わり
メンバー:上小牧 憲弘(たまには のり牧)・阿久津 雄二(Gパン)・石賀 雅浩(がっちゃん)
報告:がっちゃん

4月2日(土)
08:35 峠の茶屋 出発 → 09:25〜09:45 東南稜取付 ハーネス装着 → 09:50〜10:30 最初の岩場 → 11:05〜11:35 核心 → 12:30〜13:00 最後の岩場 → 13:05〜13:40 頂上付近 休憩 → 14:20 峰の茶屋 到着 → 14:50〜21:30 峰の茶屋 で 宴会

4月3日(日)
05:15 起床 → 07:20 峰の茶屋 出発 → 08:55〜09:10 三本槍岳 休憩 → 10:40〜11:35 峰の茶屋 休憩 → 12:05 峠の茶屋 到着 〜休暇村那須の温泉&那須のココスに寄って帰る〜

 今年は4月初旬としては雪が多いことから、上小牧さんが最初に予定していた白馬主稜よりも八ヶ岳旭東稜を目指すよう要望。前週の黒部横断を含め、今冬の泊まりの山行はすべて天気に左右され続け、直前で変更を余儀なくされているため、今度こそはと金曜日に天気予報とにらめっこした。でも土曜は晴のち曇・日曜は曇のち雨。微妙な状況と場所が厳しい所なだけに結局のり牧さんが変更を決断…実に残念である。本当に今年はついていない。しかし、このままでは負け犬になりかねない。上小牧さんが変更案として東南稜を挙げたが、そこに気分だけでも旭東稜との思いで一泊分の荷物を背負い、小屋で飲んだくれて一夜を明かす計画を立て、当日挑むことにした。またその際、のり牧さんが計画書に書いた山行の目的は「旭東稜の代わり」…なんだこりゃ。

ニュースで聞いてはいたが那須のロープウェイは既に営業していた。なので車は峠の茶屋まで入ることができ、アプローチの時間を稼ぐ。のり牧さんは少々楽しているなあと気にしていたが、Gパン&がっちゃんはそんなことは気にしない。那須連山は東南稜辺りからガスがかかり、少々天候に不安がよぎったが、ここはナス。いつでも帰って来れると思い入山する。
東南稜へのアプローチは明礬沢からと聞かされていたが、そこはドコから行くか実は誰も知らず、今回も登山道から登っていく。峰の茶屋の小屋が見え始める途中のケルンのある所からのり牧さんがルートを知っているように右下に降りていったので、とりあえず後を追うとやっぱり絶壁にぶち当たる。どこか下りられるところはないかと絶壁のギリギリの所をトラバースするが特になく、登山道から唯一雪が繋がっている沢筋まで行き、やっと明礬沢に下りる。とんだ苦労をしてしまいました。今年の那須は4月であるにも関わらずかなり雪が残っている。しかし、東南稜を見る限りは雪はないようだ。時期的には選択ミスか。まあ今日の目的は小屋で宴会することが第一で、重荷を背負ってアルパイン気分を実感するのが登攀の目的であるため、特に気にしない。取付でハーネスを着け、ゆっくり稜線を登り始める。
登り始めて30mくらいか、最初の岩場にぶち当たる。ここでロープを出す。リードはのり牧さん。とっかかりは右の手ごたえのありそうなラインを登るが、確実なホールドが見つからぬようで一時退却。左側の手も足も安定したラインに移り登る。お次はGパン。な〜んかうれしそうだ。久しぶりの岩登り、一つ一つの動作に感激しながら登っている。そしてがっちゃんは…のり牧さんが撤退したラインをトライした。さすが難しい。「セカンドであってもアルパイン、フリーではない」なーんて思いながら確実に進もうとしたが、ホールドは土が固まったようなもろいものしかなく立往生。ここは仕方なく手袋を外して素手でホールドを掴み、アイゼンの前爪を岩にめり込ませ、騙しながら登る。わずか5m程の出来事だったが非常に緊張した瞬間であった。
岩場を過ぎた後はスタカット風にがっちゃんが先頭で行くが、特に危なっかしいところはなく、むしろそのまま流しているロープが岩にひっかかったりしてバランスを崩しそうであった。岩を登るというよりは、岩のように固まった土にアイゼンの歯を刺しながら登るような感覚である。しばらく登ると幅50cmの天辺は丸いリッジの下に到着。ここで迂回するか直登するか。今日は時間は気にしないとのことで直登することにする。各自重荷(何度も言うな…)なので、リッジ越えはさすがに慎重になる。でもがっちゃんは軽やかに歩いて渡り、Gパン&のり牧さんは馬乗りして渡った。恐る恐る?という感覚ではなく、馬乗りを楽しんでいるかのようである。渡りきった後は危険な所は特に見受けられず、返ってロープがとても邪魔なので、ここで一旦解き、各自ソロで核心まで登ることにする。
核心の手前のピナクル?はいつも右にトラバースするが、今日はここでも直登する。というよりはこんなルートあったのか。一見難しそうなクラックは、ホールドがいっぱいあり、ホイホイ登れる…と気楽にいったら岩が突然剥がれ落ち、ちょい緊張。しかし、右のトラバースよりは断然楽しい。東南稜に自信がついた方にはお勧めルートであろう。抜けた後に現れた核心部に感激した。
核心部の下りはみなクライムダウン。ホールドを野生的に探し当て、自分達の力量に直面しながら…とはいうものの、風も無く暖かくみな簡単に下りてしまう。気候の差か、実力が上がったのか。浮かれているとしっぺ返しを食らいそうなので、今回は気候にしておく。そして登り返しへ。ここはロープを1本出し、のり牧リードで攻略開始。荷物の重さが影響するかと内心思いきや、最初の岩場とは段違いにスタスタ登ってしまう。お次はGパン。ロープの途中にインクノットを噛まして登る段取りにしていたはずなのだが、のり牧さんが「ちょっと待ってて」と言うので待っていたらロープを全部上げてしまう。ちょっとちょっと!油断ならぬのり牧さん。こちらからロープを引き摺り下ろし、Gパン、がっちゃんの順でこちらもスタスタ登る。次回から核心は最初の岩場にするか?なんて思うくらいにみな慣れてきていた。核心部を過ぎた後の足元は崩れやすいガレ場であり、アイゼンが全く刺さらぬため重荷(またか…)の我々にとっては一番辛い状況となった。ちょっと歩いたあと意外にも疲れが見え始めてきたのでここで最初の休憩をとる。このころにはもう雲ひとつない晴天。旭東稜でもよかったのではないかと予報を恨めしく思い始める。茶臼が一際大きく見えた。
これより最後の岩場までは各自思い思いにバラバラに…。慣れというものは怖い…なんてことは誰も考えず、ゆっくり進む。前衛峰?より先は時折雪の上も歩き、頂上直下の岩場の下に到着。ここでものり牧さん、より難しさ&楽しさを求めてイツモとは違う右のルートを提案。Gパン&がっちゃんも賛同し、核心部の時と同じ方法で攻略する。のり牧さんは一旦は大岩の左側へルート探索に向うが、すぐサマ右の凹角に修正し、途中の木の枝を使って今回初めて支点を作って登りきる。お次はGパン。ロープの途中にインクノットを…と核心と同じ段取りのはずなのにまたしてものり牧さんはロープを上げてしまう。無意識なんだろう。ありゃりゃん。今度はすかさず、がっちゃんが「ストップ」と大声発して制止。常に行動を監視していないと、何をしでかすかあなどれないのり牧さんであった。お次のGパンはここでは登りづらそうであった。Gパン装着のアイゼンはシャルレ・ブラックアイスであるが、前爪の次の歯が前を向いているため、岩場ではそれが邪魔して登りにくそうであった。まっ何はともあれここも無事に切り抜け、朝日岳頂上に到着。頂上では数人の登山者が、珍しそうものを見させていただいたと労ってくれた。どうもどうも!
頂上は風が強かったので、少し下った北側の谷にちょっと下り、休憩をとる。ここでハーネス・アイゼンをほどき、各自が持ってきたビールで乾杯する。時間的にはまだ早いが、既に人の気配もないのでそろそろ峰の茶屋の小屋に行って今回のメインを楽しむことにする。
小屋の入り口はまだ雪で埋り、通常は避難口より入るが、のり牧さんはスコップで一所懸命に入り口の除雪をする。真にまじめな人だ。でも結局は根底の雪が硬くて断念。お疲れ様です!避難口より普通に入って宴会の準備を始める。テーブルに並べられたお酒は出るわ出るわ、ワイン2L・日本酒1L・焼酎500ml・梅酒350ml・濁り酒350ml、頂上でのビールも合わせれば3人で5Lも担いで東南稜を登っていたことになる。アホですねぇ!今回の功労?者はGパン。そうそう、ワイン2Lの入ったザックは半端でなく重かった。まずは瓶で持ち込んだ濁り酒で乾杯する。各自のコップに注いだらあっけなく空に。その後はワインを片手につまみを頬張り、楽しい話題で盛り上がる。なお、話題の内容は覚えていない。また各自が持ってきたつまみのお陰で夕飯に用意した食糧には結局手をつけず、とんだアルバイトになってしまった。のり牧さん、ご苦労様でした。なにはともあれまだ明るい3時前から飲み始め、そろそろ疲れた(というよりは、酒に弱いがっちゃんは即日酔いで頭痛を発してしまった)ので寝ようとしたら既に9時過ぎ。山の中でこれほど長く飲んでいたのも記憶はなく、予想を超える状況にみな満足して小屋の奥にある3畳ほどの床に移動して就寝した。
翌朝5時過ぎ、、、がっちゃんの消し忘れた携帯電話の目覚ましで全員起きてしまう。本心は二日酔いの振りして三本槍への予定をブッチしようと企んでいたが、残念なことに頭が痛くない。Gパンは既に起きていたが、頭はまだ寝ていたようである。というよりはちょっと二日酔いらしい。またのり牧さんはこのまま寝坊してただ帰ることを考えていたそうだが、この目覚ましで三本槍まで連れて行けとのお達しかと思い、渋々起き上がる。わりぃわりぃ!外を見れば快晴。これなら旭東稜に行けばよかったとまた後悔するが、そりゃあ遠吠えである。何はともあれ今日も良い天気だ。朝は味噌ラーメンを食べて三本槍まで散歩し、かすかに冬の気配の残る那須をあとにした。

ウメコバの雨に始まり、吹雪・積雪で最後まで天候に見放された今冬ではあったが、西上州へのアイスでの開拓や今回の企画登山など、工夫すれば十分楽しめることも覚えた冬であった。なおのり牧さんは…来年はスキーを担いで東南稜ですって!ふう〜