山域: 八ヶ岳
ルート: 赤岳主稜
形態: 冬期登攀
日程: 平成18年3月11日
メンバー: 久池井 豊・久池井七生                                
報告: 久池井七生
 
 コースタイム: 美濃戸口駐車場6:30−行者小屋着9:05−行者小屋発9:35−文三郎道経由・取付10:40−準備
        スタート11:00−赤岳山頂着15:20−赤岳山頂発15:30−文三郎道経由・行者小屋着16:55
 
 前夜は駐車場で仮眠を取り、5:30起床。急いで準備するがやはり1時間はかかった。空は晴れ渡り、風もない。二人とも寝起きの体調はよく、食欲も通常通り、やる気に満ち溢れた朝だった。
 このところの暖かさでアイスバーンとなった登山道を慎重に進み、暑さに大汗をかきながら、テン場となる行者小屋へ着いた。すでにテントが1張りあり、ハイカーが2パーティ休憩していた。テントを設営し、いらない荷物をデポする。ここよりハーネスおよびアイゼンを装着した。歩き始めて樹林帯を抜けると急登になり、私のスピードが落ちる。眼前に赤岳主稜が迫り、緊張感がさらに増してくる。トラバース地点手前に、腰をおろせそうな場所があったので、小休止&登攀準備をした。
 トラバースルートは先行Pのトレースがあり、先行Pはロープを出していたようだが、よく観察すると行けそうだったので、私たちはノーロープで取り付きへ向かった。雪は、心配していたほど腐っておらず、適度にしまっておりとても歩きやすかった。取付に着きセルフをとって、ロープのセットなどをする。サングラスをしていたが、念のためゴーグルに替えた。行動食を少しおなかに入れてスタートする。
 <全ピッチ:豊リード>
1P:出だしの核心にはお助けヒモがついており、ここは迷いもなく使った。想像以上にいやらしい。難しいのはこの一手だけで、あとはミックス。雪上をトラバースし、右にぬけたところで終了。
2P:凹角の左から岩場を越え、やや雪が多めの、脆いミックス帯から雪稜を登り、凹状壁の下まで登る。ここで後続のフリーソロの男性に追いつかれ、「先いいですか?」「どうぞ」。このピッチの途中で晴天だった天候が、がらりと変わり、風が強く雪も降り出し冬山らしくなる。以後頂上まで天気は悪かった。
3P:凹状壁を越え、再びミックスとなる。
4P:ミックス。ガイドブックには「岩稜」とあったが、岩はほんの少し雪面に出ていた程度だった。ハイマツも頭が少しだけ出ていた。上部壁の垂壁下でビレー。
5P:上部壁の雪壁を右上にトラバースしてリッジに出る。
6P:核心。リード開始直後に2人組の後続Pに追いつかれる。風がますます強くなり、コールの代わりに決めておいた合図でやり取りも板についてきた。出だしの小垂壁がいやらしい。右手側のホールドはアイスに覆われて、思い切って足を広げ、左足に体重をかけるようにして乗り込み、なんとか乗り越える。ミックスを右上し、上部の垂壁に向かう。右の凹角を登る。が、結構難しく、ヌンチャク回収が、全ピッチ中ここだけ難しく感じた。抜け口は、上の岩はアイスに覆われていたので、腰のあたりのホールドをプッシュして、体を上げた。後から聞いたら、リードの豊は、バイルを使って抜けたらしい。
7P:リッジからミックス帯を登り、ガイドブックには「小凹角の左下でビレー」とあったが、雪に隠れて良いビレーポイントがなく、小凹角より少しさがった右側の岩角でビレー。後続Pはこのピッチよりコンテにしてうちらを抜いて行った。
8P:小凹角はやさしいが、コンテでは登りたくないな、と思った。雪壁を登ると、終了。稜線上の登山道にぶつかった。セルフビレーをとりながら、ロープをザックにしまい頂上へ。
 とても疲れたので、風が強く視界もわるいが、頂上で少し休んだ。昨夜家を出た時に作った紅茶を、朝、温めなおしておいた。甘めの熱い紅茶がとても美味しかった。おなかは空いていたが、行動食は少ししか喉を通らなかった。休んでいるうちに、ガスが晴れ、素晴らしい展望になった。景色を楽しみつつ、のぼり終えた感慨に浸りながら、ゆっくりと行者小屋へ戻った。