方やシューズ、方やロープを忘れ…二人合わせて一人前
登山靴で中央稜!…未熟ながらも本チャン堪能!


期日:2005年6月2日(木)
山域・山名:谷川 一ノ倉沢
ルート:衝立岩 中央稜
形態・目的:岩登り
メンバー:黒須 寛(小杉っち)・石賀 雅浩(ワタクシ)
報告:ワタクシ

時間…かなりいい加減ではある
06:35立体駐車場出発 → 07:05一ノ倉沢出合 → 07:25テールリッジ → 08:00取付点到着 → 08:10登攀開始 → 11:10登攀終了 → 11:25下降開始 → 12:40取付点着 →13:25一ノ倉沢出合 → 13:40立体駐車場着


前週土曜の古賀志にて「平日に誰か谷川行かない?水木金のどれか?」という小杉っちの誘いに、「おっ!この時期の谷川!いいですねぇ!金曜いかが?」とワタクシ即答!しかし後になって金曜は有休が取れず、やっべー!申し訳ないが、木曜か月曜になんとか変更できないかと火曜夜に再打診。すると小杉っちも金曜は天気が悪そうなことを理由に、木曜に変更することを決めていたそうで意見一致!まことにラッキー!しかし、こんなにいとも簡単に決めるから今回いろいろとハプニングが生じるのだろうか?場所は最初3ルンゼを予定していたが、前週中央稜に行った北村さん情報ではまだ雪崩の危険性があるとうことでへっこみ系は避け、我々も中央稜を目指すことにした。

最近集合場所として停めることが多くなった壬生総合公園に朝3:30集合。といってもワタクシはいつもの寝坊対策で前もって行ってから寝る。そして目覚ましは鳴ったのだが…結局は小杉っちに起こされる…あ〜ぁあ!朝の道路はスカスカ。関越は赤城I.Cから入ったものの、2時間半で谷川に到着。行く回数も多くなった影響か、最近群馬が近く感じる。さて、立体駐車場内で準備をしている最中、何か荷物が少ないことに気づく。ひとつひとつ確認すると、うぅっ!フリー靴が…ない!「あっ!」と言ったところで後の祭りである。直後に作戦会議!「さてどうしよう?」ここでワタクシが半年前に登った記憶をたどり注意ポイントを確認し、小杉っちが終始リード、いざとなったらワタクシは自己脱出して抜けることを前提に、予定通り向かうことにする。
登山事務所の先にあるゲートは閉じたままという情報を得て、今回は一ノ倉沢の出合までのアプローチにチャリンコを準備した。立体駐車場は当然1Fに駐車。エレベータにチャリンコを無理やり載せて上に行く…楽チン!6時半過ぎに出発する。ところがここで、ワタクシのチャリンコのチェンジワイヤーが前後とも破損していることが発覚。車に揺られている間に老朽化で壊れたようである。ローギヤしか使えずスピードに乗らない。普段の行いが悪いのか?ロープウェイ乗り場を右に曲がるともしやゲートが開いて…いない。よかったぁ。開門は6月3日午前10時とのこと。明日も結果的としてはチャリンコだったわけである。しかし、ザックは大して重くないのだが、チャリンコでの登りは腰が強烈に痛くなる。管理事務所に登山届を提出し、その先のジグザク道はチャリンコを押して歩き、水平道になってから再びチャリンコを扱き始めた。
普段は出合まで1時間近く歩くところを20分で到着。本日の一ノ倉沢の第一印象は雪渓が汚い!チャリンコをゲートに括りつけ、ここから歩く。出合からテールリッジまでは雪に埋もれ、ヒョングリの滝もドコにあるか判らない。雪面は細かく波打ち、階段状になっていて歩き易い。一ノ倉沢を歩くにはこの時期が一番楽なようだ。それが影響してか、テールリッジも短く見えてしまい錯覚を起こす。この後の取付までは当然地獄であった。小杉っちはテールリッジを異様なスピードで登っていく。「うそかい?マジかい?最近のチャリ通勤は意味あんのかなあ?」なんて思いながら、こちらは必死。前回のフリー靴よりかは登山靴の方が登り易いが、ペースは遅かった。前に比べてロープを担いでいる分の違いか、単に運動不足か。最後の草付きを越えて取付が見えた時…小杉っちは既にザックを下ろして休憩していた。それでも5分程の違いか?どちらにせよ本日一番疲れたのはテールリッジであり、谷川はワタクシにとっては今回ここが一番の核心であった。取付ではいきなり虫の攻撃に遭う。汗ダクダクにも関わらず、長袖とヘルメットを着用。この時ばかりは不快感120%。次回から虫除けスプレーを持参しよう。今日も小杉っち自家製梅ジュースをいただく。一気に気分爽快。さて、ハーネスを着けていざ…ところがである。小杉っちのザックにはロープが入っていなかった。〜だからかぁ、テールリッジが早かったのは〜なんて冗談を言ってる場合ではない。「シューズとロープ。どっちも半人前だねぇ。二人で一人前か」再びルート図を確認し、「今日は二人ともゆっくり慎重に…厳しかったら即座に下りましょう」をモットーに、9ミリ1本で登ることにする。
1Pは逆層ぎみの凹角というが、ドコが逆層?なんて言いながらスタスタ登る。1P終了は前回より5m手前、10aルートとの交差点である。登山靴では厳しいと思っていたが、あらま意外に快適な登攀が楽しめる。ここでいい気になって10aルートを見上げる…「こりゃだめだ!ヤメとこ!」。ロープを渡してもらう際に気づいたが、小杉っちの束はロープ1本ではあったものの、まことに綺麗であった。見習いたいものである。
2Pもルート図通りに。ルンゼを詰めた先のビレイ点で終わらす。出始めのフェースのトラバースはサクサク渡れたが、その先の岩越えの時、登山靴では足を大きく上げた場合、つま先が決まらず心細いことが判ってきた。ふむふむ。
3P。衝立正面側へのトラバースは、ハーケンの打ってあるラインを行くとあっさり通過できた。前回は1m下の方から渡った(と記憶している)が、この辺りは出来る限り楽するよう、よーく岩を見ることも大切だと一考。その後の第二フェースは登山靴のつま先が決めにくく、慎重にルートを確認して右に左に細かに移動して登る。
4P。ルート図を確認しながら小杉っちが「右(チムニー)と左(フェース)どっちが易しい?」と問うてきたので「右」と即答。とは言っても多分に正解ではなく、行ったことがある方を言っただけである。ウラを返せば小杉っちにとってはどちらでもよく、ワタクシが登れる方を聞いたに過ぎないとも思った。んが、小杉っちはここでは時間を掛ける。すると2ルンゼ辺りの雪塊が突然「パーン」という乾いた爆音と伴に粉砕し、ほんの数秒で全て流れ落ちる。本谷の下までは届かぬ小規模なものであったが、予定の3ルンゼに取り付き、もしかしたら飲み込まれていたと思うと、この時期でも雪崩の怖さを実感する。さて、ワタクシの番。前回「難しそうには見えないチムニーを目指して2.5級?程度の岩を登り、チムニーに突入」なんて感想を書いたことが恥ずかしいほど難しかった。チムニーの手前のフェースでかなりモタモタ。次第に左足の置き場がなくなり、壁に押し付けて体制を取っていたが、体を持ち上げた瞬間その足が突然滑る。今日は慎重に…と再三自答しておきながら確実さを欠いた失態。やってはいけないことである。ただ疲れたわけではないので、気を取り直して右のチムニーに移動。その後もホールドを探すが時間ばかりが経ってしまうので、登山靴ではまだまだ未熟であったと割り切り、最後の5〜6mはA0で切り抜ける。なお、最後の支点に小杉っちはカムを使っていた。「あれ?ハーケンに残置スリングでは?」と戸惑いながらも、恐る恐るカムにヌンチャクを掛けて掴み、体を持ち上げる。この辺りがセカンドの有利な点である。後に小杉っちに確認したら残置スリングは左の奥に半分切れてあったらしい。前回あったからといって、すべてを信用してはいけないことも改めて認識する。
5Pは左側のルンゼを登る。途中左側のフェース沿いに支点があったが、ワタクシは右のチムニー?沿いに確実に足を決め、ヌンチャクの回収には少々梃子摺りながもクリアー。その後は草付きの楽なルンゼとなり、右のピナクルを巻いて終了。
6Pの出だしは、左側に凹角のあるカンテライン。こすぎっちは凹角を攻めて登ったが、ワタクシは足場が多いカンテの右側を登る。ここも小杉っちは凹角に数箇所ナッツを支点に使っていったが、それがカンテの右側からだとブラインドになって抜く方向が判らず、取り外しに苦労した。なお、ルート図にある後半の左よりのルンゼは行かず、その手前で小杉っちはビレイ点をつくる。これより先は二人とも登る意思はさしてなかったので、ここで本日の終了点にする。5.5Pまで。「よくまぁロープ1本で登ったねぇ」決して誉めるべきコトではないが、こすぎっちは至る所でナチプロをふんだんに多種多様に使い、また最新兵器かローラー付カラビナを一方に持つヌンチャクを試用し、満足げ。ワタクシは登山靴での度胸試しであったが、その昔は当たり前のように使っていた先駆者達の偉大さを体で感じ、ワタクシなりにすばらしい登攀になった。
下りは同ルート下降。うちらの他には誰もおらず、下を気にせず安心して準備に掛かる。ロープ1本のため最大25mしか下降が出来ないが、それでも1Pを2回に分けた以外は大体登ってきたビレイ点を使い、下りる。4P下降時はA0で登った左側のフェースを下見する…やっぱり難しそうであった。なお、ロープ1本であるがためにとりまとめがしやすく、1時間たらずで取付点に到着。テールリッジは雨に降られなければフリクションが良く効き、危なげなく下りられた。雪渓はそこらに落ちている枯れ木を杖代わりにし、下り易い所を求めてジグザグに下降。
出合いまで行くとさすがに観光客がわんさか現れ、注目の的になる。「ドコ登ったの?」と聞かれ「アソコのトンガリ」と答えると「ひぇ〜!すごいわねぇ!どのくらい時間掛かる?ヘルメット持ってるの?重たくない?へぇ〜自転車で来たんだぁ!」…申し訳ないが返答が面倒になり、そそくさ道具をザックにしまい込み、チャリンコで駆け下りる。出合から駐車場まではなんと7〜8分。しかも殆ど扱がず、チャリンコの威力を認識。中央稜の終了点から2時間で駐車場に戻ってきてしまった。